危機と対立・紛争


ファミリービジネスの危機や紛争と言うと、ファミリーと企業との間の力学や相互作用に焦点が当てられることが多いようです。 しかし、同じくらい重要な問題は、ファミリーがどのように企業の危機を惹き起こしうるのか、あるいは、ファミリーと企業とがどのようにしたら外部の危機要因(市場や競争環境の変化など)を乗り越えていけるのかという点です。 どのようにしたら企業の利益とファミリーの利益とをうまくバランスさせることができるでしょうか。

ファミリービジネスにおける対立・紛争


ファミリービジネスでは、対立や紛争を経験する可能性が高く、小さな対立が非常に深刻な紛争に発展するリスクが高いのです。とはいえ、意見の衝突は避けられません。 それらは日常業務の一部であり、作業手順の継続的な発展を促す面もあります。 したがって、それらはネガティブな面ばかりではありませんし、完全になくすこともできません。 経営課題としてのコンフリクト・マネジメントとは、破壊的な紛争の芽を早期に見出し、建設的に対処し、何よりもそれらが固定化したり慢性化したりするのを防ぐことを意味しているのです。ファミリービジネスでは、このことは特に重要です。なぜなら、ファミリー、企業、株主グループの3つのシステムが重なり合って関係者の間が非常に複雑になるからです。すなわち、それぞれのグループの人々があっという間に争いに巻き込まれ、それらの相互作用を通じて状況が容易にエスカレートしてしまう可能性があるのです。

WIFUのが推奨する対立・紛争を避ける11の方策

WIFUは、ファミリービジネスの存続に大きく関わるこのテーマについて、数年にわたり研究を続けてきました。その過程で、ファミリービジネスに特に大きな関連性を持つと思われるいくつかの要因が浮かび上がってきました。

次のような状況では、紛争や危機を建設的に解決できる可能性が高まります。
  • …ビジネス・ファミリーが、時間をとってファミリーの問題解決を優先し、重要な事項について率直に話し合い、それらについて合意に達っしている。これが最終的にファミリー・ルール(家訓・家憲)を作ることにつながる。
  • …ビジネス・ファミリーが、ファミリーの構成員が事業や取締役会に参加できる条件、ならびに経営後継者に求められる資格基準を積極的に明らかにしている。 その際、外部からの経営参加もタブー視しない。
  • …ファミリー・メンバーが、感情的な対立に適切な方法で対処している。すなわち感情問題に対して、ビジネス・ファミリーが互いにできるだけうまく対処しようと努力している。
  • …ビジネス・ファミリーが、資産や土地、コミュニケーションの行き違いや価値観の相違、ひいては承継問題などの諸問題に注意を払い、それに対処している。紛争問題の処理プロセスを最適化し、ファミリーとビジネスとの責任の分担についてオープンに話し合っている。
  • …ビジネス・ファミリーが、ファミリー戦略の策定を共同作業として捉え、資産や土地等に関する対立に積極的に対処している。
  • …ファミリー内やファミリー以外の関係者との間の仕事上の対立が人間関係の対立に変わり、エスカレートし、さらには慢性化することに、ファミリーの誰もが警戒している。
  • …争いが起こった場合、相手の立場に立って相手の行動の動機を理解しようと、ファミリーの誰もが考えている。
  • …対立が起きている状況では、常に外からの冷静な視点が必要である。怒りは人を盲目にさせる。”今起きているのは、以前にもあったか、それとも新しいことなのか?”と問うてみるのは意味あることかもしれない。もしも、“昔見た映画”の繰り返しだとしたら、双方の関係者にとって、新しい、これまで試してこなかったステップが何かあるか?”と問いかけてみる。
  • …ビジネス・ファミリーが協力して建設的な方法で紛争処理するためのルールを、できれば、“(対立のない)良い時期 “に、確立しておく。紛争処理のルールが規定されていれば、対立がエスカレートして大問題になる事態はたいてい防げる。
  • …紛争に対する満足のいく解決が、内部だけでは達成できないことが明らかになった場合は、会社やファミリーとは関係のない外部の調停者に依頼する。
  • …株主契約には、いわゆる「紛争条項」があり、紛争処理に関して明示的に規定している。

危機のダイナミックスと危機管理


危機は、企業家の成長プロセスの転換点となるものです。危機は、成功体験と同様に企業家精神の一部なのです。すべての企業は、市場や競争の力学によって、長期的な存続が脅かされる潜在的なリスクに直面しています。ファミリービジネスでは、“ファミリー要因”がさらなる脅威となることが多く、ファミリー株主間の対立が激化することによって経営危機が惹き起こされる可能性も少なくありません。企業の危機だけでなく、オーナー・ファミリーの中にも同様に危機のプロセスが存在していることも考えられます。

前オーナーが会社に残っている状態のファミリービジネスでの危機管理の場合、問題をうまく解決するには、ビジネス・ファミリーの中で同時に進行している危機の動向についても目を向けることがとても重要です。こうしたことを念頭に置くと、危機管理を任務とする組織再編チームは、危機管理に関して広範なアプローチをとらなければなりません。

危機管理のWIFUモデル

従来の危機管理の側面に加えて、“ファミリー要因”の具体的な特徴や構成要素を分析することが重要です。 この目的のために、WIFU は独自の危機管理モデルを開発しました。

WIFU危機管理モデル

ファミリー・ファクターが危機管理に建設的な効果をもたらす場合は、それを体系的に活用すべきです。しかし、それが破壊的な影響を与える場合には、構造改革の一環として具体的な対策を講じて排除する必要があります。企業の再編や方向転換に加え、次のような点に関して適切な措置を講じておく必要があります。すなわち、株主グループ内での意思決定プロセスを体系化すること、株主ファミリー内での再編戦略を策定すること、そして、こうした状況では避けることのできないファミリー内の対立を前向きに対処することなどです。

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