このようにWIFU承継モデルでは、継承プロセスを、事業承継の時点だけでない継続的なプロセスとして考えています。 継承のプロセスは、後継者の誕生とともに始まりますが、事業責任が引き継がれた時点で終わるわけではありません。 その進行は、典型的な9段階(図では10段階)のフェーズに分けることができます。各フェーズの期間の長さは、時間の問題というより、それぞれの中心的な課題がどの程度続くかによって決まります。
事業を次世代に継承する
ファミリービジネスの事業を次世代へ継承することは、ファミリービジネスを営むすべての経営者に期待と不安、希望などの感情を呼び起こします。まずは経営を存続すべきファミリービジネスの事業に関心が向きます。これと関連して、組織や管理上の重大な問題ならびに相続や税法に関する問題が発生する可能性があります。 その一方で、ビジネス・ファミリーの一族のことも忘れてはなりません。そこには後継者を彼らの中から1人あるいは複数選ぶという課題を抱えています。平等な扱いと公平性への期待にどう応えるのか、能力を正当に評価し、それに基づいて後継者を選定する必要があります。面子を失わせるようなことは何としても避けなければなりません。なぜなら、それはしばしば家族間の深刻な対立を引き起こす可能性があるからです。 ファミリーの外から後継者を選ぶことについては“外部の人”に抱く期待も含めて、ファミリー内でよく協議しなければなりません。 WIFU が研究テーマとして、しばしば取り上げているもう 1 つの課題は、女性による承継です。 これには、ファミリービジネスが考慮すべき特徴的な条件、判断基準、観点が伴います。
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承継者を育てることは、簡単なことではありません
ファミリービジネスにとって、事業承継ほど重要かつ危うい状況はありません。事業承継によって、企業全体は通常、広範な変化を遂げるため、ファミリーおよび株主グループの機能、役割、ポジションなどを明確にし、改めていく必要が出てきます。 企業の危機や倒産の多くは、その原因を承継プロセスの失敗にまでさかのぼることができるのです。
承継に関する膨大な研究成果や助言的な文献、無数のチェックリストにもかかわらず、ファミリービジネスの承継に関して、必ず有効と言えるような成功戦略はまだないようです。 WIFU の研究結果から見ると、問題の 1 つは、承継が通常、特定の時点における事業の引き継ぎの事象として捉えられており、体系的なプロセスとして理解されていないことにあります。 さらに、しばしば承継者にばかり焦点が当てられ、承継する側の視点が忘れられることも少なくありません。
これにはファミリー自体にも責任がないわけではありません。なぜなら、公平性、子供の能力、“シニア世代が現役から退いた後”の役割や活動など、いずれも非常に感情的なテーマに関わるため、彼らは、このトピックを長い間タブー視することがよくあるからです。しかし、そうした状況で引き継ぎの決定が行われると、その時点で内在していた危機が表面化しエスカレートします。むしろ、承継を(引継ぎの時だけの問題ではなく)ファミリー内で常時行われる連続的なプロセスと見なした方がうまく機能するようです。
承継のための10の黄金律
- 承継について話し合おう!
- 株主(所有)の承継と、経営の承継とは、分けて考えよう!
- 商法、会社法、税法、相続法などの影響を熟慮しよう!
- ビジネス中心に考えてみよう!(ファミリーから離れて)
- ファミリー中心に考えてみよう!(ビジネスから離れて) .
- 後継者の選考基準は能力重視!
- 後継者が独自の経営の道を歩むことを認めよう!
- 後継者 (ならびにシニア世代) を放置してはいけない!
- 「ファミリー内での承継」以外の選択肢も検討しよう!
- 第3者のアドバイスは役に立つ!